人生楽しいことばかり

に、したい人のつぶやき

僕を狂わす三億円@恵比寿エコー劇場

Ameba FRESHで昨年10月から番組をやってる6人の舞台。4月から番組の脚本・監督を担当されているう大さんの脚本・演出ということで、一体どんな舞台になるんだろう……と不安もありつつ、4月からの番組の傾向を見る限り割と好きなタイプかもしれないと期待もしつつ楽しみにしてた。

結論からいえばすごく楽しかった。会話を中心に話が進んでいくのでテンポの良さがわりと重要だと思うんだけど、ぽんぽんぽんっと進んでいくので見ていてとても気持ちがいい。ところどころ笑いどころもあるし、台詞の中に説明臭さを感じないのも好き。途中ハラハラするシーンはありつつも最後はハッピーエンドな雰囲気に流されて終わってしまって、後になって「これ内容自体はとてもタイトル通りにブラックなんじゃない?」と気付かされる”してやられた感”もうまい。かなり満足してしまった。

 

あらすじ。

平凡なサラリーマン春男は毎年宝くじを買ってはバスケ部時代の仲間4人と当選の確認をしている。ハズレを引くことで厄払いをしていると言いながらも、ある日本当に三億円を当ててしまう。三億円の重さや居合わせた友人達からのプレッシャーに悩む春男はついに自殺する。葬式の場で春男の弟洋介が4人に見せた遺書には「4人にはがっかりした」という言葉があり、それぞれが春男と最後に会った時のことを語り始める。

 

 

そもそもの話。自分のお葬式をあげて親しい友人の反応を見るって相当ブラック。趣味が悪い。とにかく回想の中で「いい人」部分が強調されていた春男がこんなことをするには吹っ切れたって言葉だけでは弱い。文字通り「三億円に狂わされた」んだなあと思った。 

そして自分と春男しか知らない話を告白する面々。嫌われたくない等の理由で伏せたり脚色したりはするものの、それをしたとわかる形でするところがかわいらしい。よくいえば学生時代の仲間同士らしい少年ぽさを感じるし、お話としてのファンタジーさも感じる。結論を知ってから見ると、彼らが「自分しか知らないこと」として話す内容は全部袖で春男が聞いているわけで、少しでも自分に都合よく変えたことがあれば全部バレてしまうのってゾッとする。そういう意味では各人を取り巻く状況として一応ハッピーエンドの枠内に収まったものの、春男自身狂わされてしまったんだなあと裏オチ的なものを感じなくもない。

 

春男

三億当ててしまった普通のサラリーマン。長島や大西を怒らせてしまった時、まず謝る言葉が出てくるのが印象深かった。優しい性格なんだろうなあと想像させる場面が随所にあるだけに最後のブラックなオチが結構響く。

 

横村

今回のキャラクターの中ではある意味で一番ピュアで幼稚よくいえば素直。春男との会話で暗黙の負け犬同盟組んでたろ!というセリフは私の胸にも刺さった。私もそういう同盟勝手に組みがち。よこむーってあだ名がかわいい。回想中の片足上げる座り方、目が奪われる。入りの愚か者の税金の時は誰にも話聞いてもらえてなかったのに謎の説得力があるといわれるよこむー。チャンネル登録よろしく!のところがそれっぽくてうわ~~って思う(ユーチューバー見たことないけど)。あと「春男だったら気付いてましたよ!」のくだりが好き。

 

雄太

後輩キャラ続いてるな…と思ったけど、今回のは後輩み薄いというか、立場上先輩を立ててはいるものの、彼らに負けてるとは思ってない気の強さを感じるキャラだった。初日に春男が花を出してくれた話好き。早朝の歌舞伎町の公園の回想シーンのくたびれっぷりが好き。他の人の回想を見ている間の足を組んでいる姿、とにかく足が長い。ちょいちょい話を盛ってしまうのはホストの職業病みたいなもの?なのかと。非実在妹には笑ったけど。

 

安達

たぶんひとりだけ結婚してて奥さんと子供を溺愛してるのすごーーくわかる。かわいい。元ヤン感ちゃんと出てるから安心していい。髪を後ろで結んでるのすごく好き。タコ焼きの味の違いに気づいてくれる春男の話をするところ好き。「俺、そういう男よ?」のセリフが大大大好き。

 

長島

今井さんとう大さんの卓也さんの使い方の違いについてめちゃくちゃ話したくなる。どちらもすごく好きです。彼のピントがずれてる感じってお金持ちキャラならではの感覚の違いとしてピックアップされることが多いように感じた。最後に家業の経営が苦しいことをバスケ部仲間に告白した時、雄太に対して「年下がいたからつらかった」って台詞に背筋が凍った。これを言ってしまえるキャラクター性、強すぎる。

 

洋介

あまりに目が離せないのは彼の顔が綺麗なせいかと思って見ていたんだけど違った(いや違ってはいないけど)。表情が抜群によかったんだと他の方の感想を見ていて気が付いた。魅力ある表情がたくさんあるんだろうけど私は彼の真顔がすごく好きで、この舞台はその需要とがっつりハマってくれるので嬉しい。会話の端々から役者志望の洋介が春男の部屋に転がり込んでいるだろうことが想像できるけれど、そこまで賭けられる夢と独特の神様理論(?)で堂々と生きている弟の存在は春男には自慢でありコンプレックスでもあったのかもしれない。

 

最後のモノローグの「みんなにもらった五千万」が好き。単純に長島にお金を貸すのではなく、一度春男が手放すと決めたお金を仲間たちが春男のために集め直してくれるところに価値がある。春男の金をせびる流れになっていたメンバーが最後には逆の流れになってるの、ストーリーとしてきれいにまとまっていてとても気持ちがいい。

でもやっぱりお葬式ドッキリ及び嘘を吐いたら即死する告白タイムは怖い。「いくらでも嘘つけるだろ!」「みんなの話した内容を信じるよ」みたいな会話があったような気もするけど、この辺もどっちに受け止めるか判断に悩む。

 

あと回想中にそれを外から眺めてるメンバーの真剣な表情がめちゃくちゃ好きです。ちょっと訝しむような顔つきがね……とてもいい……。あそこもガン見してたら色々発見できそうな気がするんですが、全員をガン見するのはきっと難易度が高い。

 

とりあえず整理するための覚書。また思い出すことあったら随時追記します。

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4/28 追記

回想の合間の横村の「誰かが嘘をついてるかもしれないだろ」というセリフが大好きなんだけど、よこむー、あの中では「みんなが感じている不安を口にする」立ち位置の人なのかもと思った。雄太が「妙な説得力あるんですから~」というのも、つまりはみんな心のどこかで同じことを考えてたんでしょ?という仕掛けを感じさせる。件の台詞、作中では安達の「それでも俺は信じる」という言葉の前に引いてしまうけど、あの相反する二人の気持ちがバスケ部四人の中にあって、それを四人そして観客に明示するための流れなのかな~と考えたりする。フレッシュでう大さんがちらっと言った「五人の中の派閥」という言葉がすごーく引っかかってるのでここ掘り下げて考えたら絶対楽しそうでしょ!と思ってる。